「壽 初春大歌舞伎」

今年4月の公演をもって建て替えが予定されている歌舞伎座。
現在の建物での公演のうちにもう一度観に行きたいと思っていたけど
なかなかその機会もなく、
“これじゃ、マズイぞ”と思っていた昨年12月、
歌舞伎好きの姉弟子からお正月公演の声をかけていただき、
指折り数えて待ってました。

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行ったのは3日の昼の部。
「春調娘七草」
  曽我五郎  橋之助
  曽我十郎  染五郎
  静御前    福助
「梶原平三誉石切 鶴ケ岡八幡社頭の場」
  梶原平三  幸四郎 
「歌舞伎十八番の内 勧進帳」
  武蔵坊弁慶 團十郎
  源義経    勘三郎
「秀山十種の内 松浦の太鼓」
  松浦鎮信  吉右衛門
という布陣で、お正月ならではの豪華な顔ぶれ。

実は以前、團十郎さんを見たとき、
独特のセリフまわしがしつこい感じがして
あまり好きではなかったんだけど、
今回の武蔵坊のなんという迫力。
吉右衛門さんの松浦候は軽妙さがとてもよく、
もちろん、お殿様なのでその重厚さとのバランスもバッチリ。

そうそう、松浦鎮信候といえば、茶道の鎮信流の始祖。
舞台がお屋敷内に変わったとき台子が据えてあったので、
さわりだけでもお点前があるのかなと楽しみにしていたところ、
ちらっとだけありました。
もちろん、お点前は省略されたり形式化されているので
詳しいことはわかりませんが、天目台に天目茶碗で、
腰元のお縫が帛紗を右側につけていました。
この演目では、以前は煎茶を出すような演出だったそうです。
それを「この場面では抹茶のほうが自然であろう」との理由から
H19年暮れの公演から抹茶にしたのだとか。
へぇぇ~、なぜ煎茶だったのでしょうね。

ともかく、正月公演はもちろん、
あの独特の時代感のある歌舞伎座を
もう一度みておけたのはうれしかったですし
楽しかったです。

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GO WEST!~その1「みんぱくと10人の視点」

先日のお茶会の慰労会というわけではないけど、
お稽古仲間数人とでこの週末、大阪・京都へ行ってきた。
おりしも世の中では、
新型インフルエンザに感染した患者さんが出たために、
関西への旅行を取りやめたり、関西の学校の生徒の修学旅行が中止になるなど
ちょっとした騒動になっていた。

でも、私たちは決行!
もちろん、念のためマスクを用意したり、
手洗いの励行につとめたりと気をつけて。

足と枕はなるべく安くと探した結果、早朝の出発。
無事、全員揃って各々朝ごはんを済ませたらデザート。

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うっすら霧雨もようの中、新幹線は出発したんだけど、
静岡あたりでは雲も途切れ、しだいに青空が増えてきた。
富士山も、てっぺんは見えないものの、腰のあたりが見えていた。

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旅行の話が出たとき、すぐに行ってみたいと思ったのが、
万博公園内にある国立民族博物館で開催されている
千家十職×みんぱく 茶の湯のものづくりと世界のわざ」展。
一緒に旅行するお稽古仲間にも聞いたところ、
賛同してくれたので初日は
みんぱくと湯木美術館をメインに。

まずはみんぱく。
千家と深く長いつながりを持つ10人の職方たちが作った、
日本の民族的文物の展示と、
その職を守り伝えている当代たちが
世界各地の民俗文物を日本の茶の湯に取り入れたり
そこから得たインスピレーションをもとに作った道具などが展示されている。
民族博物館ならではの、ちょっと視点を変えた内容でおもしろかった。

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できれば、その十職の個々の展示だけでなく、
10人トータルで、現代の茶席を1つ作り上げてくれると
いっそう面白かったのではないだろうか。

公園内にある日本庭園で
地元の駿河屋のお菓子と薄茶をいただき、しばし休憩。

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隣接する大阪日本民芸館では「春季特別展 茶と美」が開かれており、
こちらにも足を伸ばした。

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“民芸”というと柳宗悦のほかは、濱田庄司や河井寛次郎らの名前を
思い浮かべるくらいしか情報量がない私。
そして、その人たちの作品は少しぽってりしているというか
肉厚すぎる印象があったんだけど、
ここでの展示を見ると、もう少し繊細なものもあったんだなぁと思う。

常設らしい織物は、ガラス越しでないため
(もちろん、手で触れるような場所にはないから
実際の感触まではわからないけど)
織りだされた模様はもちろんふっくらとした織り具合まで見てとれ、
デザインのモダンさ、それを実現する技術のこまやかさが
いっそう強く感じられた。

*当初、この展示は6月2日までの予定だったが、
新型インフルエンザの発症で臨時に休館したため、
会期が延長されている。

実は、万博記念公園に行ったのはこれが初めて。
太陽の塔も、初めて実物を目にした。
てっぺんの金色の丸い部分で受けた光で
太陽光発電がおこなわれていることも初めて知ったし、
後ろ姿も初めて見た。

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公園そのものの広大さにも目を見張ったけど、
「世界中から訪れた何万人もの人を受け入れたんだから、
そりゃ、広いはず」と当たり前のことを思ったり。

日本庭園のほかに芝生や木立、バラ園などもあって、
休日を過ごすにはいい場所。

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さて、お腹が減ってきたところで、
電車に乗って次の目的地へ移動開始。

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弾丸岡山ツアー その2:岡山で中南米の香りに触れる

突然ですが、下の写真、なんて書いてあるかわかりますか?

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猿かなにかのイラストのように見えますが、
これ、れっきとした文字なんです。
実は、マヤ文字で「カカオ」と書いてあるんだそうです。

Imgp1579_2 ほらね。

今回の弾丸岡山ツアーのメインの訪問先は、BIZEN中南米美術館
(http://www.latinamerica.jp/info/)。

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その前に訪れた県北の奈義町からは車で1時間半ほど、
岡山市内からは1時間ほどの兵庫県に近い日生町にあります。

「なぜ、岡山で中南米?」――こう思ったでしょう?
私も、同じように思いました。

日生町の事業家、森下精一氏が商用で訪れた南米で古代アメリカ文化の遺物に触れ、
その魅力にとりつかれ蒐集を重ねたものが、
専門家の鑑定によって学術上・美術史上極めて貴重であるとわかり、
保存・展示されるようになったものなんだそうです。

中南米と聞いて、私が最初に思い浮かべるのは「F1 ブラジルグランプリ」と
それがおこなわれるホセ・カルロスパーチェ・サーキット(インテルラゴス)。
次に、「ナスカの地上絵」「インカ帝国」「マヤ文明」の単語といったていど。
こんな無知な状態なのに、館長さんがわざわざご案内くださるなんて、
あぁ、もったいない、申し訳ない――
と思っているうちに館内ツアーはスタートしました。                             

公開されているのは「MAYA クフル・アハウの残輝」展(12月25日まで)。
マヤ王族の書記官で、ウサギの姿をした神様「アフ」くんが案内をしてくれます。

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この館の特徴は、ただ単にガラスケースの中の展示を見る
“お勉強”タイプの鑑賞ではないこと。
写真もOKです(ただし、フラッシュは使わないこと)。

たとえば、中南米はチョコレートの原料であるカカオの産地として有名ですが、
そのカカオを砕くようすを当時の道具を使って実演してくれたり、
そうしてできたカカオの飲み物を飲ませてくれたりと、
観覧者自身が五感を使って中南米を体感できる工夫がされています。
(あ、別にカカオを飲ませてもらったのがうれしくて、
それだけを覚えているわけじゃありませんよ)。

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展示物についても、
日本からもっとも遠い国で、はるか昔に起きていたことを
少しでも身近に感じてもらうため、
源氏と平家にたとえて説明してあったり、
解説文に添えられたアフくんの表情やしぐさから
どんな出来事であったのかを類推できたりと、
いくつもの工夫が織りこまれています。

さて、中南米というと、楽器のオカリナのふるさとでもあります。
ここ中南米美術館にもオカリナの原型といえるものが収蔵されており、
館長の演奏で、その音をナマで聞かせていただきました。

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また、民族衣装の織物を見せていただいたうえに、
触らせていただきました。
生地が厚く、しっかりとした織りの上に、鮮やかな色の糸で
びっしりと刺繍がほどこされています。
さぞかし重いだろうと思って持ってみると、見た目よりも軽いのにびっくり。

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陶器類も多々展示されています。
中南米というと、土の色を生かした黄土色やベンガラ色が特徴的です。
形も、凝りに凝ったものもあれば、壺や皿などにはシンプルなものもあります。
草や木、動物などの自然が模様に描かれていることなど、
遠く離れた中近東やアジアのものと共通しているのってなんだか不思議です。

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「これ、水指に使えそう」と、
つい、自分のもののように、茶道でどう使えるかを考えてしまいました。

これは「チョコレート(飲料)入れ」として作られたものだそうです。

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取っ手を持ってぶら下げることができるので、持ち運びに使われたものかもしれません。
ちゃんと蓋が閉まるような工夫が、すでに千数百年前になされていたのも驚きです。

おもしろいなと思ってみたのが、神様たち。
マヤ王族たちは、自分たち自身を神の化身と考えていたけれど、
他にも自然や畏怖やあらがいがたい気持ちを抱いていたものが多々あったようです。
しかし、それらがなんとなくユーモラス。

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死神と表現されているものなんて、なんだかおちゃめでいたずらっ子な猿のよう。

解説を伺い、いろいろなイベントを楽しんでいると、
あっという間に時間が過ぎてしまいました。

収蔵品は約1700点にも及ぶそうで、
今回展示されているものは、そのごくごく一部。
次はどんな展示になるのか、楽しみになってきました。

そうそう、ちなみにこの美術館、
外壁は地元の窯で焼かれた備前焼の陶板1万6000枚が使われていて、
設計は丹下健三氏なんだとか。
先に立ち寄った奈義町美術館は磯崎新氏、
今回は行かなかったもう一つの成羽町美術館は安藤忠雄氏と、
現代の有名建築家が岡山県内にズラっと名を連ねているわけです。
「なかなかやるな、岡山!」って感じがしました。

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弾丸岡山ツアー その1:国道53号線を北上

土曜日19時すぎの新幹線で岡山へ。
妹の家に泊まり、翌朝8時に集合場所である岡山駅改札へ。
誘ってくれたkeroさん、案内してくださる館長さん、
学生さんのOさんと、メンバーが集合。
私とkeroさんが知り合いであることを除いては、
あとはお互いにメールやWeb上でのやりとりだけの関係。
ところが、不思議なことに、館長さんが運転してくださる車が
岡山市内を抜けきらないうちから、
緊張もなく、すっかりうちとけて話してました。
で、隣を見るとkeroさんもそんな感じです。

今回の美術館ツアー、最初の目的地は県北にある
奈義町現代美術館(通称、Nagi MOCA=ナギモカ
http://www.town.nagi.okayama.jp/moca/)。

このナギモカと、あとでいくBIZEN中南米美術館、
県の中西部の高梁市にある成羽町美術館の3つは、
岡山県内の新しいスタイルの美術館として注目されているのだとか。

奈義町って名前は地図で見て知ってたけど、
行ったことはありません。
たぶん、今回の弾丸ツアーがなければ、
このあとも行くことはなかったかもしれません。

Nagi MOCAはまず、建物そのものが特徴的。
空間そのものがアートであるという考え方に基づき、
建築家の磯崎新氏が全体をプロデュースし、
数名のアーティストたちが作品としての空間をデザインしたんだそうです。

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建物は、太陽・月・大地をイメージした3つの展示室に別れていて、
館の中央に配置された池が、それらをつないでいるかのよう。
そして、いずれの建物も、太陽や月の動き、
背後にそびえる那岐山から吹き下ろす風を感じられる造りになっています。

正直なところ、ここの展示室は、写真や言葉では説明しきれません。
実際に行ってその造りやそこにいる自分の感覚で
体感し経験するしかない、そういう現代アートってことでしょうか。

◇「大地」
玄関を入り受付をすませると、右手奥に見えてくるのが展示室「大地」です。
雨でも晴れでも受け入れてしまう広い池の向こうの展示室は、
部屋そのものがアート。
手前にあるカフェテリアから見た印象より、
実際は2倍ほどの奥行きがありました。
ここでは、演奏会などのイベントも行われているそうです。
コンクリートの壁と床に敷き詰められた石。
どんな音の響き方がするのか、
コンサートのために音響面での何か工夫がされるのか、
機会があれば訪れて、自分で体験してみたいと思います。

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◇「太陽」
建物の入口に向かう途中で右手に見えていた横たわる大きな筒、
この筒が展示室「太陽」。
狭いらせん階段を上り、足を踏み入れた先が大きな筒の中だと気づいた瞬間、
ちょっとクラクラっとする感じ。
近くにある龍安寺を題材にしたものだそうで、
筒の内側の左右に石庭が作られています。
地面と天井には、ベンチやシーソー、鉄棒が置かれています。
それも、地面と天井、左右と、それぞれがアシンメトリー(非対称)。
さっきのクラクラする感じは、ほどなくして消えました。
正面にある白く丸い壁が、太陽の光をやんわりと室内へ届けます。

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ここでの様子は、筒の下部にある部屋でモニターすることもできます。
(こういうしかけを見つけると、つい、遊んでしまいます)

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また、太陽の筒の下部には、ここを訪れた人たちから送られてきた
写真が壁いっぱいに貼られています。
ここで、今回ご案内くださった学芸員さんによく似た写真を発見。
開館当時に撮ったものなんだとか。
遠くから来た人はもちろん、
町民の方たちの写真もどんどん貼っていくと楽しいでしょうね。

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◇「月」
三日月のような形をした展示室が「月」、
「休息のためのひさしとベンチ」がテーマ(だそう)です。

でも、中に入ってみて感じたこと――きっとここは
「音」が隠しテーマなんじゃないでしょうか。

来館者の履き物によって、床を歩く音がまったく違うことや、
三日月型の両端の窓から入り抜けていく風のかすかな音。

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展示品以外にも「あれっ?」と思うことの多い展示室です。

◇ギャラリー&休憩室
別室のギャラリーでは、「山部泰司展~変容する絵画」が開催中。
ここでの発見は、絵の具の香りが漂ってくること。
今年制作されたばかりの新しい絵も多く、その香りでしょう。
ガラス越しの展示では体験できない、
また、経年変化も楽しめる展示でした。

ギャラリーに向かう途中にある休憩室も見逃してはいけません。
外の庭と、「月」との間にある中庭の緑が鮮やかで、
那岐山からの涼やかな風が感じられる一室です。
ここで、テーブルを使ってのお茶会なんてのもステキじゃないでしょうか。

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そうそう、カフェテラスに戻ったところで、
keroさんが急にカメラをガラスに向け始めました。
「何してるんだろう?」と思ったら、
そこには小さなアマガエル。
カエル好きのkeroさんにご挨拶しに来たようです。

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現代アートというと「なんとなくわかりにくい」「抽象的」
といったイメージを持っていたのですが、
“それで拒否してちゃもったいないな”というのが、
ここを訪れての印象です。
9月には観月会なども企画されているそうですよ。

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鎮守の森で能を観る

「杉並で能楽を見る会」という団体が主催する観能の会へ行きました。
会場は大宮八幡宮(杉並区)の境内にしつらえられた特設舞台です。

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ここでの観能の会の特徴は、始まる前に火鑽り・火入れの神事が行われること。
つまり、松明を焚くための火を、古式にのっとって熾すのです。
(あとでググったら、よく似た道具を発見。弓切り式っていう方法のようです。
http://www.uminekoya.co.jp/hiokoshiyumigiri.html

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この火鑽りというもの、力任せに動かしたのでは火は熾きないし、
なかなか難しそうです。
種火がつくまえに、かすかにですが火の匂いが漂ってきました。

無事、松明が赤々と燃えあがり、いよいよ能の始まり。

 能 羽衣
 狂言 口真似
 能 鵜飼
というプログラムでした。

能の詳しいことはさっぱりわからないのだけど、
羽衣をまとったあと、天人がおだやかな微笑みをたたえたように
見えるのが不思議、だってお面を変えているわけではないのにね。

始まったころはまだ明るかった八幡さまの境内がしだいに薄暮れていき、
羽衣がクライマックスを迎えるころにはすっかり夜の帳が降りています。
銀杏や竹が高くそびえるなかに、鼓や笛の音、地謡の声が朗々と響きわたるさまは
なんとも言えない幽玄の風情を感じます。

狂言は、現代でいえばショートコントのようなものでしょうか。
お酒の相手を探して来いと命じられた太郎冠者が連れてきた客は、
主人のお気に召さない人物。
それを不服に思った太郎冠者が「私のするとおりにしなさい」という主人の言を
逆手にとってとぼけたふるまいをする……ざっとこんな内容です。

屋外でのイベントで一番心配なのは天候。
この日の天気予報は「山沿いでは一時雨が降るかも」というものでした。

ここは山沿いではないのに、休憩をはさんで鵜飼が始まるあたりから
小さな雨粒が落ち始め、しだいに本格的な雨降りになってきました。
そのため、鵜飼は途中で中止。
残念だけど、止むを得ません。
雨粒が落ちかけたときから、鼓や笛などの楽器を演奏する人には
後から傘が差しかけられましたが、
演者さんはしばし雨に濡れたまま。
衣装や道具など、あとの手入れがさぞかし大変だったのではないでしょうか。

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西行のかなを見に

夜、出光美術館へ。
30日まで開催中の「西行の仮名」展
http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html
の展示品解説を聞きに行ってきました。

書はまったくもってちんぷんかんぷんですが、
西行という人には興味があって、
どんな字を書く人なのだろうと思っていたからです。

 年たけて またこゆべしと 思ひきや
    命なりけり 小夜の中山

西行の歌境を代表されるというこの歌は、
69歳にして再度陸奥の国への旅を仰せつかった際、
中山峠を超えるときに詠んだものだそうです。

箱根と並ぶ難所とされる中山峠(静岡県掛川市)ですが、10年ほど前、
仕事でここを徒歩で越えたことがあります。
田舎育ちの私でも
「うっひゃ~、ここを越えるのは昼間でも勇気がいったことだろうよ」
と思ったくらいでした。

研究者の方々の解説を読むと、この歌には
「自然と一体化した安らかな気持ちがあらわれている」とか、
「人生の味わい深さが感じられる」といった解説がされていますが、
自分が中山峠に立ったときに、もう少しポップな
「あちゃ~、またここを越えるんかい?」といった心情もあったのではないかと、
ふと思ったのです。

西行の文字のうんぬんはもちろんわからないのですが、
ただ、その端正な文字から、いろいろな思いをめぐらせたのちに、
「さあ、行こう」と背筋を伸ばした姿が思い浮かんだのでした。

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吉向十三軒 茶陶展へ

新宿・京王百貨店の美術ギャラリーで、
今日から「八代吉向十三軒 茶陶展」が開かれています。
大阪の十三(じゅうそう)に窯を開いたから十三軒。
吉向は、金印・銀印とともに徳川将軍家から拝領した名前。
200年余り続く窯で、今日庵(裏千家)では
その出入方として名前が知られています。

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吉向さんというと、私にとっては
樂茶碗や交趾のイメージが強いのですが、
青磁や織部、鉄釉で絵を描いたものまで
幅広い作品が展示されていました。

京王の美術ギャラリーには茶室「京翔」が併設されており、
そこでは展示期間中、薄茶一服が振舞われます。
今日は、裏千家の当代家元の伯母様にあたられる塩月宗芯先生が
釜をかけていらしゃいました。

床には裏千家12代又玅斎、13代円能斎、14代淡々斎の
3代家元が一文字ずつお書きになった「福禄寿」の軸。
花入は塩月先生自作のたっぷりとした篭花入。
実はこの篭花入、まだ完成していません。
「茶人として、人として、まだまだ未完成」というお気持ちを
あらわしたものだそうです。

塩月先生ご自身もお出ましになっていて、
お茶がいきわたったころに皆さんにご挨拶なさっていました。
塩月先生は、もちろん貫禄も存在感もおありになるけれど、
たおやかでにこやかでした。
素敵な方だなと、ひよっこが生意気にもそう思うのでした。

ところで、肝心の吉向さんの作品はというと、
お茶室で使っていらした黒樂の平茶碗がよかったです。
なんだか今日いらした方、皆さんそうおっしゃるのだとか。
使い込まれたよさというのでしょうか、
きれいだけではない「用の美」や、
使い手の愛情を受けたものが持つ輝きというのか、
そういったものを感じました(これは売り物ではないそうです)。

また、塗り物でよく見かける鯉桶もありました。
やや背が低く、もちろん、バランスをとるため
左右も小さめなんでしょうが、
菓子器として出されています。
これに塗蓋をつけて水指にも使えないものか、
一器多用だわ、などと考えてみたのですが、
残念ながら私には手が届きませんでした。

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五燿会 茶陶・漆芸展

昼食時間にちょっとだけ足を伸ばして新宿へ。
京王百貨店の美術ギャラリーで行われている
「五燿会 茶陶・漆芸展」へ行ってきました。
 備前焼:金重 愫
 萩焼 :田原陶兵衛
 色絵 :川瀬竹志
 唐津焼:西岡良弘
 漆芸 :村瀬治兵衛
の5氏による合同の展示会です。

デパートの美術品や茶道具売り場は、
気軽に立ち寄れるのでわりと好き。
見せていただくのも気軽だし、
今はなるべくたくさんのものを見ておきたいと思うので。

川瀬さんは7年前、工房におじゃましたことがあります。
今回も、これからの季節に使いたくなる
涼やかでちょっとしゃれた感じの作品がたくさんありました。

他の方々も、皆さんビッグネーム。
まじかで見せていただき、
「これは、あの道具とあわせるといいかしら」
とか
「これはあの人をお招きしたときなんぞにいかが」
とか
心の中でブツブツ言いながら見せていただきました。

その後、立礼席でお薄を一服。
あぁぁ、落ち着くなぁ。
お菓子は練切の青楓でした。

今日は、時間がなく駆け足で見たので、
できればもう一度行ってゆっくり
見せていただきたいと思ってます。

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行きたい!

今週は仕事がコミコミ
でも、気になる記事を新聞で見つけてしまった!

代官山のヒルサイドテラスで予定されている
「ポルトガル・フェア」。

ポルトガルはずいぶん前、1992年にF1を観に行き、
気に入った国です。
鱈料理が有名だけど、パンがおいしかったのは意外でした。

イベントは来週から。行けるかな?

あ、ポルトガルももう一度行きたい!

もう一つは、少し先だけど東京国立博物館の「大徳川展」。
「唐物肩衝茶入 初花」と
「漢作肩衝茶入 新田」が同時に出るんです。
「混んでる」とか「○時間待ち」とか聞くと、
気持ちが萎えて見のがしてしまうことが多いんだけど、
今回はどんなに混んでいても行くぞ!

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久々の京都2:日本の美に触れる

ランチを満喫したあと、知り合いの塗師、岩淵祐二さんの作品展へ。
http://blog.goo.ne.jp/urusinomawari
会場は風蝶庵というカフェの2階にあるギャラリーです。
ここにたくさんの漆塗り作品が展示されていました。

薄茶器のスタンダードな型のひとつである紹鴎棗も、
時代によってわずかな型の違いがあるのだとか。
聞いただけでは「ふぅん」で終わってしまうだろうけど、
実物を前にして見比べながらだと、
ちょっとだけ深く納得できる気がします。
実は、話を伺う前に実物を見て
「同じ名前で同じ大きさのようなのに、どうしてこっちのほうが大きく感じるの?」
と思っていたんですが、それが解決しました。

このところ茶道具は自主規制しているんですが、
ちょっと気になって忘れられない作品があります。
平たい小さめのお盆(もちろん塗り)で、
楓や桜のシルエットを描き出したもの。
とくに、桜のものを見たときに
「どうしたらこういうスタイルでの表現を思いつくのだろう」
と目が釘付けになってしまいました。
そりゃ、プロなんですから、絵ゴコロもあるし、
デザインや表現に工夫をこらすことは当たり前なんだけど、
それでもそのセンスと、イメージを具現化して実際のモノに仕上げる
技術力がバランスよく備わっていないと形にはできないでしょ。
プロだからあおれは当たり前で、失礼な言い方になるけど、
でも、とにかくビックリなんです。

菓子器にしてもいいだろうし、懐石料理だって
油分のない香の物や八寸代わりに使えるかもしれない。
まだ、あきらめきれないでいます。

風蝶庵で「相国寺承天閣美術館でやってる若沖展はいいよ」という
話を聞きました。
昨夏、東博(上野の東京国立博物館)でも開催されていたものだけど、
そのときに見逃していたので相国寺へ行くことに。

平日でどしゃ降りの雨の中だというのに、大変な人出です。
絵はまったくわからないのですが、
鳳凰のなまめかしい目にビックリ。
会期は3日までなので、
今週に入ってからは平日でも1時間以上の入場待ちらしいですよ。

Imgp0241比較的おとなしめの絵はがきを何枚か買ってきました。

実物の縦横比に合わせてあるので、官製はがきに比べスマートです。

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